報道資料作成のコツ
プレスリリースを配信することでテレビ番組からの取材を獲得したい企業は大変数多く存在しています。「大変多い」というよりも「殆どの企業」といえるほど、何らかの形で影響力が強いテレビ媒体を上手く活用して広報活動をしたいと望んでいるのではないでしょうか。しかし残念ながら、テレビ媒体への広報活動は失敗に終わるケースの方が圧倒的多数です。それには様々な原因があるのですが、殆どの失敗企業が犯してい代表的なミステイクの中から、「紙媒体向けのプレスリリースフォーマット」をそのままテレビ媒体リーチにも使用してしまっているという間違いに着目してみましょう。
一般的なプレスリリースフォーマット(紙媒体向けプレスリリースフォーマット)
紙媒体向けのプレスリリースフォーマットは様々な書籍等で説明がなされております。また、殆どの企業の広報部で、社内教育の一環として新入社員は何らかの形で習得する機会を得られることと思います。それらの場面で皆さんが耳にするプレスリリース作成のポイントは、大まかに下記のようなものがあげられるでしょう。
- 大事な事柄がリリース上部に来る「逆三角形」スタイルが基本
- 1.タイトル 2.リード文 3.本文の3部構成をとる
- 5W1H1Nを盛り込む(いつ、だれが、どこで、なぜ、なにを、どのように、ニュース切り口
- できるだけ必要な事柄をコンパクトにまとめこむ
- 挿入する写真は説明文章の邪魔にならない程度に
こういった紙媒体向けプレスリリースの常識をテレビPRに当てはめて活動をする企業が多いのが現状ですが、残念ながらこれらのセオリーはテレビ向けプレスリリースには一切当てはまりません。テレビ媒体にはテレビ媒体向けの報道用資料フォーマットがあり、クレバーな広報部員ならば、そちらを活用するべきなのは当然の事です。
例えて言うなら、「建築図面」の話があります。建築士以外の一般素人にとって、建築図面はそれが例え自分のマイホームについて書かれたものであったとしても、完全に読解するには難解なことこの上ありません。これは、我々建築の素人の頭の中には建築図面というものの「フォーマット」が存在しないからです。一方、建築士にとっては建築図面を読む事はたやすいでしょう。これは、建築図面というものの「フォーマット」が頭の中にきちんと存在しているからです。
テレビ向けのプレスリリースについても同じことが言えます。テレビ業界人は、マスメディア各種媒体の中でもかなり特殊な環境で仕事をしています。新聞雑誌等の紙媒体とはコンテンツ制作の過程も、関る人数も、コストも、時間も、その全てが異なります。そして、紙媒体向けのプレスリリースフォーマットを頭の中に所有している人は、報道部署担当者か特定の局といった、ごく一部の人々に限られます。なぜなら、殆どのテレビ制作マンはビジュアルで物事を考える思考回路を持っているため、文字情報が中心の紙媒体向けプレスリリースのフォーマットを頭の中に持つ理由が一切無いからです。いずれにせよ結論は1つ、「一般的な紙媒体向けプレスリリースフォーマットは、テレビ業界には適さない」という事実のみです。
それ以外にも通常の紙媒体向けプレスリリースがテレビ業界で無視されてしまう原因をいくつかご説明しておきましょう。
多忙なテレビマンは全てのプレスリリースに目を通せない
テレビ番組には毎日山のようなプレスリリースの数が届きます(残念ながら、その殆どが「紙媒体向けフォーマット」のままで、テレビマンに訴求ポイントを伝え切れていないのは既にご説明の通り)。そして、当然その殆どがゴミ箱へと直行になります。長時間労働業種の典型であるテレビ制作関係者にとっては、時間は非常に大切なワークリソースです。自分が興味もないネタ(しかも、文字ばかりの紙媒体フォーマットリリース)等を見ている時間などは当然とれませんし、意図的にとりません。プレスリリースのようにこういった外部から集まってくる情報に関しては、効率的にさばくことがテレビマンの能力の一つになります。要は、ほんの少数の大切そうな内容のものだけを閲覧して、後はゴミ箱へということです。では、その大切そうな内容のリリースはどうやって見分けているのでしょうか?次から具体的に説明をいたします。
複数枚数で構成されたプレスリリースを除外する
素早くプレスリリースをさばくには、見やすい案件から優先的に閲覧していき、読むのに時間がかかりそうなもの「複数枚数で構成されたプレスリリース」を削除してしまうことです。テレビ業界では番組企画書を作成するのにもA4用紙1枚で収めるのが常識です(複数シートにかかるような企画は「ダメ企画」の烙印が押されます)。これは在京キー局民放はもとより、NHKでも常識でありテレビマンの取り扱う資料の絶対条件の1つです。番組企画レベルですら1枚もの資料が求められているのですから、(たとえ取材をされたとしても)番組のほんの1部コンテンツにしかなりえないプレスリリースなどが複数枚数で構成されていれば、当然、閲覧してもらえるわけがないのです。こういった細かいルールすら知らない広報担当者は大手企業ですら珍しくありません。
ビジュアル中心…プレスリリースで訴求すべきポイントがズレすぎている
テレビマンの要求する情報訴求ポイント「絵になるかどうか」です。よって、企業が作るプレスリリースは当然ビジュアルで勝負しなければなりません。考えてみれば当たり前すぎる話で、普段からビジュアルで勝負している映像媒体を扱う職場に務める最前線の人間にたいして、文字中心の紙媒体向けプレスリリースで勝負をしようなどというのがどうかしています。ですから、テレビ媒体向けのプレスリリースは、従来のような文字中心、タイトル、リード文章うんぬんかんぬんといったようなロジックは一切通用しません。いかにテレビマンに「ビジュアライズされて、映像化されたときに面白いものが撮れそうかを想起させる資料」を作ることができるかどうかにかかってきます(ですから、弊社ではテレビ向けプレスリリース資料作成に、現役の放送作家を投入することでテレビマンのニーズにできるだけ答えうる資料を作成しているのです)。極端な話、従来型の文字中心プレスリリースを送るくらいならば、リリースしたい新商品をビジュアルインパクトのあるグラビアアイドルが意味深に持っているだけのような資料の方が、ぐっと訴求度が高まるくらいです(実際にこの方法をやらないでくださいね、あまりに陳腐なので。あくまで例えです)。
テレビ向けプレスリリース上にて「ビジュアル」で勝負する方法には色々な方法がありますが、1つの例をあげてみましょう。端的に言いますと、プレスリリース資料に添付する写真資料に「動きを見せる」という方法があります。
「動きを見せる」というのは非常に抽象的に聞こえると思うのでなかなかイメージもじずらいかと思いますので、事例を上げながらご説明いたします。職業人としてテレビマンが扱うのはもちろん静止画ではなく、動く映像です。ということは、テレビマンにとって「動く映像」を想起させる事ができるプレスリリースでないと、それはネタ資料としての価値が全く無いものであると言えるわけです。「動きを見せる」というのは、プレスリリースが取り扱うネタを、どういう形の映像にすると(テレビマン的に)面白くする事が出来るのかという情報を加えておかなければならないのです。
「動きを見せる」方法は色々と在りますが、我々が使う代表的且つ分かりやすいな例は「人物が入った写真を使う」という方法が挙げられます。よく一般的な新商品発売発表系の紙媒体向けプレスリリースでは、そのまま雑誌や新聞媒体にて流用できる形の「商品そのままのブツ撮り写真」が利用されます。その写真にはモデルさんが商品を使っているようなシーンなどは一切含まれません。商品を撮影しただけの、ただ単にキレイな写真に過ぎません。これはテレビマンに通用する写真ではありません、「動きがない写真」だからです。
ところが、単なる商品ブツ撮り写真をやめて、「人物が商品を使用しているシーン」の写真にすることで、そこには大きな「動き」が生まれます。テレビと言う媒体は何を映したいのかというと、一言で言えば「人間」なのです。世の中の様々な事象や商品、現象等を通じて、その裏側にある人間模様を撮影したいと思っているのが、全てのテレビマンに関する共通的な考え方です。また、テレビマンでなくとも、無機物である商品だけの写真に比べて、人間は本能的に人が映っている有機的な写真や映像に対し、優先して目が行きます。
このように、誰にでも出来て最も簡単なテレビ向けプレスリリースに「動き」を出すやり方、それは「人間が入っている写真」を使う事なのです。
視聴率とF1M1神話…番組制作者の思考回路を理解していない
フォーマットとビジュアルについて話をしてきましたが、テレビ向けプレスリリース作成を考える際にもっと大切な部分もあります。テレビ媒体にアプローチする場合は「視聴率を意識したネタに限定する」と言う事です。これも考えてみれば当たり前、(NHKを除き)ほぼ全てのテレビマンは多かれ少なかれ視聴率と言うものに人生を左右されてしまうからです。ましてや、テレビ局から仕事を請け負っている立場の制作会社やリサーチ会社、構成作家事務所等であるならば、番組視聴率が悪ければそれはそのまま「仕事がなくなること」に直結します。このことを理解していない企業広報担当者さんが多数いらっしゃいます。視聴率的に貢献しないネタを一生懸命プレスリリースにして送りつけていれば、そもそも論としてテレビPRが成功するはずがないのです。
ではどういった内容の情報が視聴率に貢献するネタとして取り扱ってもらえるのでしょうか。それぞれの番組毎、局毎の戦略・演出方向性・テーマ・放送時間帯と視聴者との属性関係等があるので一言で言い切るのは難しいのですが、東京キー局民放であるのならば、「F1・M1層」を意識した情報、特に、F1層を意識したネタが多くの番組で重視されている事に気付くべきでしょう。なぜこれらの視聴者層を狙うのかと言うと、単純にスポンサー商品が消費されやすくなるからです。残念ながら(?)、現在のテレビ番組事情では、団塊世代やリタイアメント世代に対する番組を作っても、スポンサー商品に対する訴求度は上がらないことがわかっています(しかし、これを逆についているのがテレビ東京だったり、NHKだったりもしますが)。
そこで在京キー6局の1日の番組表の中からF1層を意識したコンテンツを持つ番組を調べてみると、下記図のようになりました(赤塗りの部分がF1層を意識した企画・コーナーを含む番組)。いかにF1層を意識した番組が多いのかが分かると思います。
具体的にどういった内容がF1層に受けるのかというのは、時流やトレンドによって大きく変わるので一言で言うのは難しいでしょう。しかし、リーチしたい番組の「視聴率日報」などをビデオリサーチ社から手に入れて調査する事ができれば、その番組でどういった内容の放送回、1回の放送回の中でもどのコーナーが分間視聴率をとることが出来たのかを知ることが出来ます。当然、そういった視聴率獲得実績のある内容にすり合わせる事ができたプレスリリース内容が有利なのは、言うまでもありません。
[※注意] ただし報道部署向けのプレスリリースは紙媒体向けに近いフォーマット
ここまで簡単にテレビ媒体向けプレスリリース資料について書いてきましたが、これらは情報番組、バラエティ番組などを主に制作する「情報局」(※呼び方は局によって異なります)及びそれら番組制作に携わるプロダクション向けの作成方法になります。これと比較して、「報道番組(=ニュース)」を制作している部署である「報道局」、及び、それらに携わるプロダクションに対するプレスリリースは、紙媒体に非常に近い形のものでも割と採用されます。ただし、長い放送尺の企画などでの取材を狙う事は難しく、あくまで速報性重視、数秒程度放送の「フラッシュニュース」を対象にする場合のケースです。そうはいっても、やはり「映像」を意識した内容でないと、報道局向けリリースと言えども採用してもらう事は難しいでしょう。
これまでの事をまとめてみると、1.「紙媒体向けプレスリリース」 2.「テレビ向けプレスリリース(情報局用)」 3.「テレビ向けプレスリリース(報道局用)」の3パターンのプレスリリースを、企業広報部は最低限用意をしておかなければならない事になります。
ニュースの4報
紙媒体向けプレスリリースと報道局向けプレスリリースは「割と近いフォーマット」でも割とOKといいましたが、実際の報道番組では何を求められているのでしょうか。両者は割りと近い形であるとはいえ、決定的な違いも持っています。それらを知るには、報道局の制作マンが考える「よいニュースとは?」という事を知らなければなりません。
報道局制作マンが考える「よいニュース」とは、ニュースの4分類の中の、第4番目のものであると言われます。ニュースの4分類とは、下記のようになります。そして、テレビ業界での「付加価値」は何かと言うと、一般的には映像としての付加価値が求められる事になります。
- ニュースの第一報: 世の中で起きた事実を単純に報道する(5W1H)
- ニュースの第二報: その事実の中身について報道する
- ニュースの第三報: その事実が起こった意味について報道する
- ニュースの第四報: その事実の背景・理由について報道する(付加価値)
この「ニュースの第四報」の付加価値というものこそが、報道局制作マンが「こいつは放送しないといけないな!」と考えるきっかけ・理由になるものです。この点について、報道局用のプレスリリースを作成するのならば、しっかりと伝えておかなければなりません。もちろん、そこには映像的に面白いものになる可能性があるという条件がついてくるわけですが。テレビ東京系列のワールドビジネスサテライトなどでは、番組制作の方針を「ホウ!」「へえ!」と視聴者をうならせるニュース番組として差別化したいといっています。彼らの言うところの差別化、それは即ち、上記4分類でいうところのニュースの第四報に現れる「映像化できるニュース付加価値」 ということになるわけです。この点は紙媒体向けプレスリリースとは決定的に異なります。























